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内容:






番号:96名前:管理人日時:2018年04月04日08時58分36秒権限:利用
【年金時事通信】18-002号 (作成日:2018年4月4日)
「高齢化する貧困(上)年金の枠組み内で対応を」2018年3月26日 日経朝刊15面
○経済教室欄における小塩隆士・一橋大学教授による論説である。「生活保護の受給者約210万人のうち、65歳以上の高齢者は約100万人で半分近くを占める。…公的年金による所得保障では対応しきれない貧困化が高齢者の中で進みつつあるようだ。」としている。
○この状況に対し、教授は、「貧困の高齢化への対応は、生活保護ではなく公的年金を中心にして検討すべきだと考える。…生活保護は高齢者にとっても現役と同様、あくまでも緊急避難的な仕組みと位置づけるべきだ。」としている。正論であり、賛同できる。
○だが、「公的年金の所得保障機能を強化」する手段として、「第1に短時間の非正規労働者にも被用者保険の適用範囲を拡大し、公的年金というセーフティーネット(安全網)から外れるリスクをできるだけ抑える必要がある。」としているのは、いかがなものか。
○教授は、マクロ経済スライドで「基礎年金だけしか受給できない…高齢者の場合、…裁定された年金額がその後大きく削減される。皮肉なことに所得面で不安を抱える高齢者ほど、公的年金による所得保障は手薄になりかねない。」と正しく問題を指摘している。
○であるなら、第一に考えるべきことは、被用者保険の適用拡大ではなく、基礎年金の位置付けや機能回復ではないのか。労働市場では、フリーランスなど「被用者」に当たらない働き方が、今後は増加すると想定される。そうした変化への対応が急務であろう。
○そのためには、軽視されている基礎年金に焦点を当てて考える必要がある。まず、60歳までの基礎年金の保険料拠出期間を、少なくとも65歳、さらには、被用者年金の加入可能期間までには延長する必要がある。それだけでも基礎年金は大きく強化されるだろう。
○これを阻んでいるのが、基礎年金保険料に対する2分の1の国庫負担である。だが、一方で、教授が危惧しているように、生活保護に対する国庫負担は増加する見込みである。公費負担は、国民の安心・安全を高める立場から、総合的に検討する必要があるだろう。
○マクロ経済スライドのあり方についても、再検討すべきであろう。現行の基礎年金と被用者年金の財政が分離されていない状況では、被用者年金のマクロ経済スライド減額が終わっても、土台の基礎年金の方の減額が続くという奇妙奇天烈なことが起きていく。
○もっと展望すべきことは、今後、AIの普及拡大によって、働き方に大きな変化が生じると思われることである。現在の仕事のうちの少なからぬ部分が、AIによって代替されると想定されており、すでに、そうした動きは、あちこちで目につくようになっている。
○その結果として、多くの人々が、職務の転換を迫られるようになるものと想定される。一時的には収入源を失うことが危惧されるので、識者の中には、BI(ベーシックインカム)の導入による対応が不可欠であると危機感を訴える人も、少なくない状況である。
○こんな状況からすると、一時的避難の生活保護と、防貧対応の基礎年金とを、総合的に再編して、ベーシックインカムの構築を目指す必要があるのではないか。少子高齢化の先頭を走る日本には、その責任とともに、各国の範となる期待が向けられよう。(以上)


番号:95名前:管理人日時:2018年03月02日10時59分06秒権限:利用
【論評】確定拠出年金 幻の改革
2018年3月1日付日経朝刊2面のコラム/真相深層の記事である。確定拠出年金制度の改正で、運用商品を、「投資信託に強く誘導する米英型の抜本改革は見送られた」ことを批判的に評するものである。
「リスクはあるがリターンも見込める株や投信の保有比率は、2016年末で米国46%、英国38%に対し日本は19%」とし、株や投信への運用比率を高めるべきであるという主張なのだが、果して、それが妥当なのか。
日本の確定拠出年金の原資は、退職金である。老後に備えた大事な資金であるのだから、その運用に加入者が慎重になるのは、当然であろう。これに対し、米国の401k制度は、給与の一部を、税制優遇の下で、投資に振り向ける仕組みである。いわば、余剰資金なのであるから、高収益を目指して株などに資金を振り向けやすい。
また、投資市場についても、違いがある。日本株への投資に慎重なのは、個人に限った話ではない。プロの金融機関でも、マイナス金利の日銀預け金を少なからず抱え込んでいる状況である。日本株が投資対象として魅力的なら、黙っていても、投資割合は増えるのではないか。
それを、行動経済学を引き合いに、「リスクを過度に恐れる加入者の背を押す政策介入」を求めるわけである。株や投信の関係者が確定拠出年金での投資割合を増やしたい魂胆は、より手数料が入るからではないのか。老後資金を食い物にしようとしているという疑念を、拭い去ることができない。
もともと、日本では、退職金が確定給付企業年金に切り替えられてきていた。そのリスク負担に企業が耐えられなくなって、個人に運用を委ねる確定拠出年金に移ってきたのである。その経緯を知る者なら、安易に、個人にリスクを取るべきであると言えるはずはない。
もっとも、管理人は、株や投信への運用を否定的に見ているわけではない。大事な老後資金なのだから、加入者自身が、じっくり考えて選択すればよいのである。ところが、記事の「投信をデフォルト」というのは、意思表示をするほどに決心のついていない人も、リスク商品での運用に巻き込もうというのである。余計なお世話というものである。本道は、投資についての理解を、地道に求めることではないのか。
その一方で、2018年2月27日付日経夕刊7面のコラム/十字路「『率』で計画する資産形成」は、確定拠出年金の拠出額について、「米国フィデリティでは年収の15%を推奨」を引き合いに、「これだとつみたてNISAの年間非課税枠40万円では足りない。iDeCoと併せてもまだ厳しい。非課税上限の引き上げは急務といえよう。」としている。
この論考に欠落しているのは、非課税扱いは、他人に税金のしわ寄せをしているものである、という視点である。生活困窮者に支援金を出そうとすると、税によるバラマキであるとの声が、あちこちから上がる。確定拠出年金などの非課税枠の拡大は、高所得者に有利な税のバラマキと変わりはないのだが、それを問題視する声は少ない。それも、「行動経済学」の貢献なのであろうか。


番号:94名前:管理人日時:2018年02月28日08時48分17秒権限:利用
【論評】裁量労働制をめぐる本質的論議を深めよ
2018年2月23日付日経朝刊2面の社説である。「厚生労働省がずさんな調査をし、安倍晋三首相が答弁に使ったことは批判されて当然だ。ただ裁量労働制の拡大には、ホワイトカラーの生産性向上を促す意義がある。」とし、「裁量労働制の拡大や脱時間給の新設は15年4月の最初の法案提出から棚ざらしにされている。これ以上、先送りは許されない。」というものである。
これに対し、同じ2018年2月23日付の朝日朝刊16面の社説「裁量労働拡大 法案から分離し出直せ」は、「裁量労働制の対象拡大など、規制を緩和する部分を『働き方改革』法案から切り離す。現場の実態を調べ、国民が納得できる制度を練り上げる。政府はそう決断するべきだ。急がねばならないのは、残業の上限規制など働き過ぎの防止策である。」としている。
まるでトーンが違うが、どちらの言い分の方が正しいのだろうか。そもそも、労働市場改革に焦点があたったのは、電通での新入女子社員の過労自殺事件であろう。それを受けて、長時間労働是正に加えて、同一労働同一賃金の処遇の機運が高まった。
ところが、今回提出する法案には、慎重論の強かった裁量労働制の拡大と、労働時間を規制から外す高度プロフェッショナル制度の創設が抱き合わされている。
金融商品を購入する場合にも、抱き合わせ商品がある場合がある。リスクがあって手数料の高い投資信託と、金利を優遇した定期預金の組み合わせなどである。一般的に、抱き合わせは、売れないものと売れるものとを組み合わせるわけである。今回の政府の方針は、まさに、それを地で行くものであろう。
長時間労働の是正を標榜しながら、一方で、経営側にとっての労働時間の足枷を外す、これは、まるで詐欺的商法ではないのか。過労死の遺族が裁量制拡大に反対の声をあげているのも頷ける。厚生労働省のズサン極まるデータ処理にはあきれ果てるしかないが、それが発覚して問題が白日にさらされたのは、天恵と言えるものかもしれない。さもなければ、数の力で、政権が法案成立を簡単に押し切っていたとも思われる。
それでも、安倍首相は、法案再検討の気持ちは、さらさらなさそうである。これは、もはや、「安倍一強」とかではなく、「安倍独裁」ではないのか。
そんな安倍政権の姿勢に、経済界は、追従的に見える。日銀黒田総裁のマイナス金利による円安誘導と、日本株買い支えによる株高が、東京オリンピック特需と併せて、企業収益を押し上げているからであろう。権力と密着して、おこぼれをもらおうとする姿勢である。歴史の教訓は、権力への追随は、権力の暴走を招くということである。先の大戦後の「過ちは繰り返しませんから」との誓いは、教養と矜持なき財界人には、無縁のものだったのかと危ぶむ。


番号:93名前:管理人日時:2018年02月27日07時24分18秒権限:利用
「年金思」さん 年金時事通信18-001号へのコメントありがとうございます。
「今のままでは単なる金持ち優遇」というご懸念は、その通りかと思います。ただ、少子高齢化の進展に対しては、「長く働く」ことを基軸にするしかありません。そのためには、「年金支給開始年齢の引き上げ」は、避けて通れないと思います。
しかし、ご承知のように、それについては、検討の動きがあっただけで、マスコミが大騒ぎして潰しているという状況です。「70歳以降への繰り下げ」は、くせ玉ではありますが、それに対する窮余の策としての側面があると思います。
65歳前の「低在老」については、65歳への支給開始年齢の引き上げ完遂により、自然消滅することになります。「高在老」の46万円が高いのはその通りですが、本来、「働けば年金を停止する」という在老の仕組みは、高齢者の雇用促進という考え方に合致しません。やはり、年金は支給停止しないが、年金と給与とを合算した高所得には課税強化するというのが本筋でしょう。
その場合でも、「金持ち優遇」の側面は出てこざるを得ず、在老よりも有利な状況になることが考えられます。それに対する方策は、マクロ経済スライドでも相対的に有利となる厚生年金の比重を減らし、基礎年金の比重を高めることだろうと思います。
マスコミや世論の表面的な反発を恐れ、マクロ経済スライドの完全実施で年金問題は片付くなどと言っている三文学者の言い分に黙しているようでは、年金改革は先に進みません。少子高齢化に対応する年金のグランドデザインを考え示すことが、何よりも重要ではないかと考えます。


番号:92名前:年金思日時:2018年02月26日19時33分23秒権限:利用
70歳以降の繰り下げが最近話題になっているが、現状ではほとんど意味がない。70歳以上で働いて収入を得られる労働環境がほとんどないからだ。今のままでは単なる金持ち優遇になりかねない。やはり高齢者の働く環境が整ってからの話であろう。このところ急に政府が熱心に言い出した裏には、支給開始年齢自体の65歳からの引き上げの布石という意図が透けて見える。支給開始年齢の引き上げには反対ではないが、こういう混乱を助長するくせ玉はよくない。また、在職老齢年金は昭和36年4月2日生まれ以降の人からは低在老がなくなり、65歳前の繰上げ受給者には46万円の支給停止額が適用されるので、あえて早めの改正には踏み込まずこのまま放って手はつけずにおこうという考えなのではないだろうか。高在老の支給停止額46万円であれば大部分の在職者は年金の支給停止にかからず全額支給となるからだ。


番号:91名前:管理人日時:2018年02月20日09時51分28秒権限:利用
【年金時事通信】18-001号 (作成日:2018年2月20日)
「高齢化と年金 不安に応える改革こそ」2018年2月18日 朝日朝刊8面
○「政府が新たな高齢社会対策大綱を決めた」ことに対する社説である。注目しているのは、「原則65歳からの年金の受け取りを、70歳より後に遅らせることができる仕組みを検討する」との大綱の記述である。高齢者の就労を促し高齢化に対応する考え方である。
○社説では、「働く高齢者を増やすと言うのなら、一定以上の給与があると厚生年金が減額・停止される在職老齢年金の仕組みこそ、見直しを急ぐべきだ」「(非正規が多い高齢者のためにも)厚生年金の適用対象をさらに広げていく改革も必要だ」としている。
○いずれも妥当な主張であると思うが、労働市場の変動を考えると、「厚生年金の適用拡大」を主軸に置く考え方でよいのか、という気がする。今後は、雇用主のいないフリーランス的な働き方が、一段と増加していく可能性があり、その対応が必須と思われる。
○2018年2月15日付日経朝刊6面のコラム/中外時評「官製春闘」より制度再設計」は、政府主導の「官製春闘」を続けても効果には限界がある、とし、「大企業を中心にした男性正社員の雇用・賃金保障を要とする日本型システムの見直し」が必要だとしている。
○そのことに異存はないが、「パートの人が労働時間を抑えずに済むための改革」について、「『専業主婦モデル』を前提とした制度が女性の就業促進を阻んでいる」という見方には、注意が必要であろう。この見解は、安易な第3号制度廃止論につながりやすい。
○「税と社会保障を一体にした再設計」を言うのなら、夫婦の所得を合算分割して課税する2分2乗を主軸とすべきである。そうすれば、働き方や生き方に中立な制度になるであろう。目標は、「女性の就業促進」ではなく、「就業阻害の排除」とすべきであろう。
○これまでの「男性正社員」中心の考え方は、キャリア中断のない方がベターとするものであった。終身雇用・年功序列という仕組みは、それとあいまって、出産・育児によるキャリア・ブレイクのある女性を、差別的に取り扱うように機能してきたのではないか。
○しかし、このように一社にしがみつく(つかせる)働き方は、産業構造が大きく変貌する時代には合わない。むしろ、立ち止まって将来を展望する時間を持つことが重要なのである。この点で、出産・育児・介護といったキャリア・ブレイクも良い機会になる。
○「定年後の賃金の大幅減」が問題になるのは、大企業の「男性正社員」である。自分達が定年後に非正規の立場になって、初めてその悲哀を知るわけだが、要するに差別の現実に背を向けてきただけではないのか。士農工商崩壊後の「士」のようなものである。
○社説で、年金減額の「マクロ経済スライドをきちんと機能するようにする」という主張にも、違和感がある。「同時に、給付抑制の影響を大きく受ける低所得世帯への目配りが欠かせない。」ということになるのなら、単純な給付抑制の主張であってはなるまい。
○世代間の支え合いは、本来、国民全体を対象とする基礎年金を主軸に考えるべきであろう。厚生年金の方に有利な仕組みを温存しているから、愚かな議員が厚生年金被保険者になろうとするのである。年金改革には、大局観が必要なのではないだろうか。(以上)


番号:90名前:管理人日時:2018年02月14日07時40分29秒権限:利用
【論評】(平成経済)第2部・昭和モデルの崩壊:3 非正社員、守らぬ労組
2018年2月11日付朝日朝刊4面の記事である。「『働く人の味方』だった労働組合が、平成に入って大きく変わった。長期不況でリストラの嵐が吹き荒れるなか、余裕を失った『正社員クラブ』は、自らの職や賃金を守るため非正社員の拡大を黙認した。働く人の間に分断ができ、その溝を埋める役割を労組は果たせていない。」という論調である。
しかし、そもそも、日本の労働組合が、「働く人の味方」だったのか、大いに疑わしい。日本の労働組合の特徴は、企業内組合であるが、その形態では、ともすれば、経営側と結託して、自己の利益を図ることになるのではないか。典型例は、過労死に到るまでの時間外労働の容認である。
記事では、「改正労働契約法の『5年ルール』の趣旨を骨抜きにする会社の規則を変えてもらう」ために労働組合を訪ねた期間従業員に対して、対応した労組幹部は「制度に問題はない」という立場を変えず、組合員への加入要望にも対応しなかった、とある。
「正社員の雇用や賃金を守るための防波堤」という労働組合の意識は、派遣労働舎の拡大と、リーマンショック時の派遣切り騒動につながったが、いまだに大きな変化はないようである。組織率の低迷も、存在感の低下も、当然のことではないか。
これに関して、2018年2月10日付日経朝刊31面の読書欄では、神林龍『正規の世界・非正規の世界』が紹介されている。この書評で、著者の知見の一つとして、「『正規』雇用の下にある被用者について、長期雇用・年功賃金という『日本的雇用慣行』の特徴が1990年代以降、今日まで安定的に存続してきたことである。『非正規』雇用の拡大でこうした慣行の下にある被用者のシェアが低下したという反論が予想されるが、著者はデータ分析に基づいてそれも棄却する。」とされている。これには、違和感を禁じえない。
この本は読んでいないが、その知見のベースは、著者が発表している論文『常用・非正規労働者
の諸相』(https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/18322/1/gd09-120.pdf)であろう。だが、データ分析は重要だが、気をつけないと、木を見て森を見ず、ということになりかねないのではないか。
日本の労働市場の問題について、管理人は、正社員、(契約)、パート、派遣、外国人、というように、いわば封建時代の士農工商のような労働身分制が強化されてきたことにあるのではないかと思っている。その背景には、かつての男女差別が、男性が基幹職で女性が補助職という形から、男女雇用機会均等法を経て、男性が正社員で女性が非正規という形に変化してきたことがあると考えている。もし、それが本質であるなら、正規雇用が安定していた、と分析してみたところで、今後のあるべき姿の展望につながるものではないのではないか。
日本の2017年の男女平等ランキングは、世界で114位である。そんなことはないだろう、とか、女性の政治家が少ないのが響いた、という声があるが、労働組合中央の連合でも、その幹部16人(副会長以上)のうち、女性は、女性枠の副会長ただ1人である。これでは、労働者の代表として、働き方改革を担う資格があるのか、と言われても、仕方ないのではないか。


番号:89名前:管理人日時:2018年02月03日11時36分47秒権限:利用
【論評】W杯出場選手に年金制度創設へ 日本サッカー協会
2018年2月3日付日経朝刊37面の記事である。「ワールドカップ(W杯)に出場した日本代表選手への年金制度をつくる考えを示した。日本協会の放送権収入の3~5%を積み立て、早ければ2019年度予算に組み込む。」「すぐに米大リーグのようにはならないが、(W杯初出場した)1998年の選手から払える可能性がある」とのことである。
一部の選手にとっては朗報かもしれないが、年金制度の現状からすると、いささか時代遅れの発想に思える。企業年金制度では、会社が現役時代に掛金を拠出し、引退後に保証した給付を支給する「給付建て」の年金は廃れてきている。英米では、従業員の過去の勤務分の保障は必要だが、新規採用の従業員に対してばかりでなく、既存の従業員の今後の勤務分についても、「給付建て」の制度を提供する企業は激減している。日本でも、「給付建て」の企業年金制度は、数年前から減少してきている。
代わりになっているのが、「掛金建て」の制度であり、日本では、確定拠出年金制度である。この制度の本質は、都度支払われるべき賃金の一部を、従業員の口座に入れるものである。従業員は、その資金を自分で運用して老後に取り崩すこととなる。政府は、国民が自分で老後の準備をすれば、公的年金へのプレッシャーが軽減されるので、この「掛金建て」制度にも税制優遇を行っている。
「給付建て」制度であっても、本来的には、企業は、賃金とは別に年金のための掛金を払ってくれるわけではない。賃金も掛金も、どちらも労働コストであるから、要は、支払い方の問題に過ぎない。
ただ、かつて「給付建て」が一般的であった背景には、従業員をつなぎとめたり、会社の裁量で給付設計に従業員の貢献度を織り込んだりできる利点があったのである。ところが、低金利になり、投資環境が不透明になると、将来保証する年金の約束は重くなる。加えて、死ぬまで支給する終身年金では、寿命の伸びで支給期間も長くなる。そのことが、「給付建て」から「掛金建て」へのシフトが起きている原因である。
そうしたことを踏まえると、「給付建て」の年金制度の新設は、時代にそぐわない。もちろん、サッカー選手などのスポーツ選手にとっても、老後の安心は重要なことである。それをサポートするためには、むしろ、現役時代の活躍した時に、選手の老後に向けた個人勘定に資金を拠出し、その選手の老後に向けた準備を促す方がよいのではないか。そのために税制優遇の下で活用できる国民年金基金や個人型確定拠出年金の制度もある。一部のスター選手にとってではなく、より多くの選手の老後の安心を高めることが、そのスポーツの土台を強固にすることにつながるのではないか。


番号:88名前:管理人日時:2018年02月03日07時34分39秒権限:利用
【論評】人生100年時代 備え厚く 長生き年金相次ぐ
2018年2月2日付日経朝刊1面の記事である。同3面(きょうのことば)で、長生き年金についての説明もされている。そのキーワードの一つが「トンチン年金」である。これは、年金受給者が死亡した場合に、その人の資産残分を生存者に分配するもので、長生きリスクに対応し得るものである。ただ、一方で、他人の不幸(死亡)が自分の幸福(分配)につながるという点で、倫理的な問題があるともされてきた。
1面記事では、三井住友銀行の「長生き年金」が紹介されているが、これは、「三井住友海上プライマリー生命保険と開発し、米ドルと豪ドルで運用する国内初の外貨建て商品」なのだそうである。「円建てより高い積立利率が見込める半面、円高の局面で円に転換すると受取額は目減りする。…60歳で契約し、70歳から米ドルで受給すると、83~84歳まで生きれば払い込んだ保険料より多くの年金をもらえる。」というのであるが、とてもいかがわしい。
「米ドルで受給」しても、国内で生活する限り円に転換する必要があるから、その為替手数料がかかる。三井住友銀行には、この生命保険商品の販売手数料も入る。つまり、リスクはすべて購入者に負担させ、銀行にはリスクのない手数料が入るという仕組みなのである。
円建ての商品とできないのは、金利がマイナスともいう異常事態だからであるが、そんな中でも、銀行はマイナス金利の日銀預け金を利用している。それくらいなら、利回りの高い外国債券に投資すればいいはずだが、過去に痛い目にあった経験がある。自分では取れない為替リスクを顧客に押し付けるという姿勢だが、年金を頼りとする高齢者の願いと投資知識の不足につけ込む悪どい商売の色合いが漂う。
3面解説では、「男性より女性のほうが平均寿命が長いため、同じ契約条件なら女性の保険料が高くなりやすい。」とある。男性の視点からすると当然のようだが、実は、これにも問題がある。男女の別は、違いは明らかではあっても、本人は選択できない。人類の歴史上の発展として、違いによる「区別」は避けられないとしても、本人が選択できないものによる区分は、「差別」とされてきた。人種、性別による区分は、それにあたる。なので、公的年金の保険料や給付には、その区分がない(過去にはあったこともあり、経過的に残っていることもあるが)。
たとえ民間の保険料であっても、男女の区分は当然に許されるものではなく、憲法違反にあたるものとも考えられる。さらには、女性の社会進出や性同一性障害にも見られるように、男女の差は判別しがたいものにもなってきている。
もとより、長寿化の進展に対して、様々な工夫が行われることは、必要であり、望ましいことである。しかし、判断能力の低下が避けられない個人にリスクを負わせる仕組みが蔓延したのでは、かえって社会を不安定化するのではないか。高齢者にとって、何よりも大事なのは、老後の安心であろう。個々人の資産を受け入れ、収益性よりも安定性を重視して集合的に運用を行う仕組みの早期の創設は、社会的要請なのではないかと思う。


番号:87名前:管理人日時:2018年01月27日12時44分41秒権限:利用
【論評】AIが労働者に迫る変革 仕事の技能、生涯学ぶ必要
2018年1月27日朝日朝刊11面の記事(元はニューヨークタイムズ)である。量子コンピューターがAIにもたらす革新について、コラムニストのトーマス・フリードマン氏が書いたものであるが、深く考えさせられる。是非一読をお勧めしたい。
「今日の技術水準のAIでも、中程度の技能が必要とされる仕事はもちろん、高度な技能を要する仕事をも取って代わろうとしつつある状況に注目してほしい。さらにあと10年もすれば、量子コンピューターによってこうした状況に拍車がかかるだろう。そこから目をそらすことはできない。」とし、「こうした動きは、先進国にとって難しい課題を投げかけている。だが、エジプトやパキスタン、イラン、シリア、サウジアラビア、中国、インドといった国々にとってはなおさら深刻な問題だ。必要な教育を受けていないため、すでに自動化が進みつつある「中程度の技能の仕事」にすら就けない若者が大勢いるからだ。」と進めている。
カギとなるのは教育で、教育専門家は「知識を詰め込む教育から、継続的なプロセスとしての学びに移行する必要がある。自ら行動する力を持って学び、適応する能力を身につけることが重視される」と言う。「教える側の役割も変わる。人々が継続的な学びを進めてゆく段階で、社会的、精神的にサポートする任務を担うことになる」、と引用している。
まさにその通りであるが、日本の文部科学省が統制している教育の現状を見ると、暗澹とする。東京の大学に学生が集中しないように定員規制をするというような発想では、この先どうなるのだろうか。学びの場は、もはや場所ではない。ネット上での講義は、当たり前になっている。
一方、2018年1月27日付日経朝刊5面「外国人労働者 最多に 10月末127万人、5年で60万人増 人手不足の職場補う」は、「技能実習制度や留学生として事実上の単純労働者が急増しているのが実態だ。外国人を活用したいという企業も増えているものの、実習生の数や年数には限度がある。」として、外国からの単純労働者受け入れ拡大を意図しているようである。しかし、技能実習制度は、国際的には、奴隷労働だとまで批判されており、問題事例の表面化も後を絶たない。結局のところ、外国人に限ったことではないが、企業は安くこき使うことしか考えていないのではないかと思える。
人手が足りないのなら、まず賃金を上げればいい。それが難しいのなら、AIなどの活用を考えるのが本筋であろう。そのような方向にこそ、新時代への対応の光が見えてくるのではないか。


番号:86名前:管理人日時:2018年01月27日08時59分49秒権限:利用
【論評】年金支給額 据え置き 18年度、次世代にしわ寄せ
2018年1月27日付日経朝刊5面の記事である。マクロ経済スライドは発動しやすいように改正されたが、「改定の判断材料となる物価は上昇しているものの、過去3年の賃金が平均でマイナスとなったことに配慮」の仕組みを残したため、来年度も発動しないのである。
筆者は、この配慮の仕組みについて、一定の評価をしている。物価が上がっているのに年金が引き下げられるのでは、生活への影響が大きいからである。今回引き下げるべきだった0.3%は、さ来年度以降に、キャリーオーバー分として追加引き下げとなる。ただ、このキャリーオーバー分が累積していくと、将来、一気に大幅な引き下げとなり、政治介入で圧縮される恐れはある。この点については、2018年1月27日付朝日朝刊5面の記事「年金、抑制分持ち越し 新年度、同額で据え置き」で、日本総研の西沢和彦主席研究員が指摘している通りである。
そもそもの問題は、基礎年金にも厚生年金にも、同じマクロスライド改定率を適用していることにあるのではないか。賃金上昇率は、「名目手取り賃金変動率」として定められているが、用いられているのは、「厚生年金保険の被保険者に係る標準報酬平均額」である。この「標準報酬平均額」の算定にあたっては、「厚生年金保険の被保険者の性別構成及び年齢別構成」を考慮し、「標準報酬月額の等級の区分及び標準賞与額の最高限度額の改定の状況による影響を除去」とされているが、厚生年金の適用拡大(もちろん、これは望ましいことであるが)で、相対的に賃金の低い被保険者が増加すると、上昇しにくいのではないかと思われる。
基礎年金の対象は、厚生年金被保険者だけではない。また、物価上昇に対する年金引き下げの抑止の必要性は、基礎年金の方が切実であろう。本来は、基礎年金はマクロ経済スライドの対象から外すべきであると思うが、それはおくとしても、厚生年金にはマクロ経済スライドを全面適用とし、基礎年金には法改正前のような名目下限措置を残すというやり方も、あるのではないだろうか。


番号:85名前:管理人日時:2018年01月26日10時53分08秒権限:利用
【論評】受給年齢の拡大だけでは拭えぬ年金不信
2018年1月26日付日経朝刊2面の社説である。「百年安心をうたう年金改革法が成立した2004年を最後に、歴代政権は本格的な改革を避けてきた」ことに対し、「70歳以降の受給開始を選べる制度」を評価しつつも、「65歳へ引き上げ途上にある支給開始の基準年齢をもう一段、引き上げる改革こそが王道である」として、基準となる年金支給開始年齢の引き上げを求める意見である。ところが、2004年改定について、給付と負担のバランスは基本的に確保されたとして、年金支給開始年齢の引き上げは必要ないと唱える学者もいる。
そうした主張に抜け落ちているのが、公的年金とは何か、確保すべき給付水準とは何歳からどの程度なのかという視点である。
2018年1月25日付朝日朝刊17面のコラム/論壇時評「福祉の逆説 充実を支持する層は」で、歴史社会学者の小熊英二氏は、「福祉の充実が、貧しい人に支持されていない。嘘(うそ)のようだが本当の話だ。」としている。「福祉の専門家である大沢真理・宮本太郎・武川正吾が座談会」をベースとしたもので、「普通なら低所得層が福祉の充実を支持し、高所得層が福祉の負担を嫌うものだ」が、調査では、高福祉高負担の「支持が多いのは高所得男性と高齢者で、低所得者、身体労働者、生産労働者、若年層は支持が相対的に低かった。」という調査結果だったそうである。
その理由について、大沢氏の分析も踏まえて、「いまの福祉が、所得の高い人から税や社会保険料を多めにとり、所得の低い人に重点的に給付する制度だったら、所得の低い人は『高福祉高負担』を支持するだろう。ところが、日本の制度はそうなっていない。」としている。
実は、このことは、公的年金制度にも当てはまる。適用拡大が進められてはいるが、厚生年金から排除された非正規労働者などは、国民年金に加入し、基礎年金のみが頼りである。ところが、2004年改定によって切り下げられることとなった給付額は、厚生年金が下げ止まっても、基礎年金では、なお下落するということになっているのである。
税の方では、フリーランス的働き方の増加などへの対応も考え、基礎控除を拡充し、給与所得控除を圧縮することとした。それが時代の流れであろう。ところが、公的年金では、基礎年金を冷遇し、厚生年金に重きを置くという真逆な事態となっており、その改善のための議論すら起きていない。
そもそも公的年金は、国民の老後における基礎的な所得保障を提供するものではないのか。2004年改定より前には、年金関係者にとって、それが当然の前提だったのではないのか。基礎年金を冷遇し破壊する2004年改定の信奉者に、公的年金を語る資格があるとは思えない。


番号:84名前:管理人日時:2018年01月26日09時54分15秒権限:利用
【論評】議員年金の復活は許されない
2018年1月24日付日経朝刊2面の社説である。自公政権のおごりやたるみが指摘されているが、これもまた、典型的な事態と言えよう。
「議員は自営業者と同じように国民年金の対象だ。事業主に雇われておらず、厚生年金を適用するのは無理がある。不十分だというなら、国民年金基金や確定拠出年金などに入ればよい。」というのは、まったくその通りである。どうひっくり返してみても、議員を厚生年金の加入者にして、税金で半分の負担をする理屈など、見つかりようがない。
2018年1月13日付日経朝刊4面「地方議員年金に復活論 『なり手確保』 自民、法案提出へ 集票役つなぎ留め期待」は、議員の現状とともに、この動きの裏の意図を報じている。議員の毎月の報酬は、町村で20万円強、市で40万円程度だが、特別区で60万円、都道府県や政令都市では約80万円とのことである。その上に、昨今報じられている不明朗な政務活動費もある。
裏の意図としては、「地方議員は、国会議員にとって自らに代わって地元をまとめる集票マシン。こうした人をつなぎ留めないと、国会議員自身にとっても地盤の沈下につながりかねない。」との見方が示されている。何をか言わんや。こういう連中に、政治を弄ばれている国民こそ気の毒である。だが、それも国民の審判の結果ということにされる。選挙での一票は、いかにも重い。


番号:83名前:管理人日時:2018年01月25日15時05分49秒権限:利用
猪田さん コメントありがとうございます。
ビットコインについては、日経のコラムに「投資が苦手とされる日本人が、投機そのものとしか思えないビットコインにうつつを抜かしているのは奇妙きてれつ」というような趣旨のことが書かれていました。まったく、その通りだと思います。
ところで、必要とされる所得は、衣食住(+医)にかかる生存に必要なものと、それ以外に分かれますが、先進国では後者の比率が高まる一方のように思います。ベーシック・インカムは、前者にかかるものが主体でしょうが、少し整理して考えてみたいと思います。
ああ、そうそう。2018年1月21日付朝日朝刊37面に「AIは哲学できるか」という寄稿がありましたね。いやはや。


番号:82名前:猪田日時:2018年01月24日09時12分24秒権限:利用
「労働生産性の向上」に関してちょっと表題から外れますが、コメントします。
以下の部分については、全く同感です。
「そもそも、成長している産業には、人間の生存に不可欠な基本的な「衣・食・住」にかかるものは少ないように思う。むしろ、嗜好や娯楽など、ありていに言えば、「ひまつぶしの仕事」が増加しているのではないか。
このような状況にあっては、仕事の価値観も変わっていくであろう。本当に人の役に立つ仕事こそが、やり甲斐のあるものとの認識が高まることが期待されよう。」
金融機関出身としては複雑な気分ですが、Bitcoinへの注目は、根幹にある画期的なBlockchainという構造よりもMoney Gameとしての側面ばかりが強調されていますし、そこにはSNSの広がりなども強く影響しています。さらにAIによる作業効率のアップも、今後「ひまつぶしの仕事」の増加に寄与しそうです。
AIや3Dプリンター、IoT技術などはどれをとっても非常に面白く、可能性はとても高いものだと感じているし、自分でも勉強しビジネスに生かそうとしていますが、方向性を誤ると悪い意味での社会的な影響は大きくなってしまいます。なんて言うか、哲学とかが大学などでもっと注目されるといいのかななんて思っています。


番号:81名前:管理人日時:2018年01月23日21時14分41秒権限:利用
【論評】賃金体系のあり方
2018年1月22日付日経朝刊1面「賃金再考(1)日本の賃金、世界に見劣り」は、「主要7カ国(G7)で日本だけが2000年の賃金水準を下回る」のに対し、「年功序列や終身雇用など『日本株式会社』の慣行にとらわれない賃金のあり方が求められている」としている。そして、「短い時間で効率よく働いても時間で測る従来型の賃金体系では働く人に成果を還元できない」として、「時間ではなく仕事の成果で賃金を払う『脱時間給制度』」の法制化に議論を進めている。
不思議でならないのは、法制化しないと成果に応じた賃金を支払えないとする発想である。実際に、企業は、時間の長さだけで賃金を決めているのか。そんなことはないだろう。企業の怠慢は、優秀で早く仕事を終えることのできる社員に対して、賃金で報いることなく、さらに仕事を押し付けて、長時間労働を強いてきたことではないのか。
時間でなく成果で報いる最も簡単な方法は、労働時間さらには労働日数を短縮することである。そうすれば、優秀な社員は、余った時間で、さらなるスキルアップや副業だってできる。
『脱時間給制度』の法制化は、これとは、まるで異なる世界をもたらすであろう。それは、客観的な成果測定基準のない中で、成果があがっていないとして、さらなる長時間労働を強いられる姿である。だからこそ、労働者サイドから、「残業代ゼロ法案」とのレッテルが貼られたのである。
経営者が、自らやろうとすれば可能な労働時間や賃金体系の変革を行わずして、お上も認めたことだから、と労働者にしわ寄せを図る。こんなことで良いのか。ああ、そうでした。世界的に見て長高齢な貴方たちこそが、年功序列・終身雇用の具現者だったのでしたね。


番号:80名前:管理人日時:2018年01月23日01時37分02秒権限:利用
松浦さん 早速のコメントありがとうございます。
AIによる労働の軽減・価値の創造は、かつての発明や発見と同様に、人類にとっては、福音だろうと思います。しかし、一方で、格差は広がりますね。
その恩恵を受けるのは、「資本家」というよりも、才能を持つ個人が筆頭なのだろうと思います。そのことがIT長者などの出現につながっているのでしょう。資産家は、彼ら彼女らに投資して、収益を得ることができるわけですが。
そこで問題は、このような富裕層に、応分の負担を負わせることができるかどうかでしょう。ところが、それが難しいのです。そうした富裕層の活動は、国境を簡単に越えます。企業でも、例えばアマゾンが安価で送料無料の商品を提供できるのは、活動地での税金を払わなくてすむからだと言われています。
企業に対しては、国際的にも問題となっており、対処の兆しは出てきていますが、富裕層個人への対応は、さらに難しく、今後の課題だと思います。
ヨーロッパの小国マルタ・キプロス・ブルガリアでは、お金を出して数年で、市民権を与える投資プログラムを提供しているそうです。EUパスポートも発行できるそうですが、そうなると、国とは、国籍とは何か分からなくなります。
法人税の引き下げ競争で、各国は、企業の誘致を競っています。そのことが、短期的には自国にとって有利に思えても、長期的には、すべての国の財政を危うくするにもかかわらず、です。
このような動きは、富裕層個人の獲得競争にもつながるでしょう。なので、国単位で富裕層への課税強化を考えても、有効な対策にはなりません。
BIの試練は、まさに、その点にあります。BIの実施は、当面は国単位でしかできませんが、そこに他国から貧困層が押し寄せたのでは、立ち行きません。移民には慎重にならざるを得ないわけです。
こうした状況下で、「革命」は成立するでしょうか。打倒すべき搾取者は、一体どこにいるのでしょうか。
AIやBIが投げかけている真の問題は、人類が世界規模で連帯できるのかどうか、ということであるように思います。


番号:79名前:松浦日時:2018年01月22日23時01分53秒権限:利用
AIの行き着く先はベーシックインカムであることはその通りだと思います。そうであってほしいと思います。AIを否定したところで、いまさら、経済の国境線を強くすることはできないので、どこかの国がAIを使います。とはいえ、AIに投資ができる資本家だけが肥える世の中は、庶民には許容されないので、革命のようなことが起きるだろうと思います。今は、その過程にあるのでしょうか


番号:78名前:管理人日時:2018年01月22日17時35分18秒権限:利用
【論評】年金受給開始年齢の70歳超選択
2018年1月17日付日経朝刊1面「年金受給開始 70歳超も」は、「政府は公的年金の受け取りを始める年齢について、受給者の選択で70歳超に先送りできる制度の検討に入った」ことを報じている。現在は、本来65歳の受給開始を70歳まで延期すれば、年金額が期間に応じて増額されるが、70歳超では増額がない。これを、70歳超(75歳ないし80歳までの検討の模様)にも適用しようということである。
高齢者の就労を促し、年金に依存する期間を短縮することは、少子高齢化対策の要であり、筆者もかねて主張してきたところである。なお、この場合、在職老齢年金の廃止・給与所得控除と公的年金等控除の一体化も、併せて検討すべきであろう。
ところで、記事には、「70歳超の部分は65~70歳で受け取り始める場合の上乗せ(いまは0.7%)よりも高い上乗せ率にする方針」とあるが、ここには検討すべき点がある。そもそも、65歳以降70歳までの月0.7%の増額率は、2004年改定で導入されたものである。その水準には、平均余命と利子率が影響するが、当時から10年以上を経て、状況は大きく変化している。
最新の第22回生命表(2015年国勢調査ベース)によれば、平均余命は、男子で、65歳19.41年、70歳15.59年、75歳12.03年、女子で、65歳24.24年、70歳19.85年、75歳15.64年となっている。
現状では、金利はゼロとも見えようから、この平均余命で増額率を計算すると、男子で、65歳→70歳24.5%(=19.41/15.59ー1)、65歳→75歳61.3%、70歳→75歳29.6%、女子で、65歳→70歳22.1%、65歳→75歳55.0%、70歳→75歳26.9%となる。ただし、男女別に考えることは性差別になるので適切ではないことは、言うまでもない。
現在の65歳→70歳の増額率は42%となっており、上記よりは相当に大きい。これは、生命表が古い影響よりも、利子率を現在からするとかなり高い水準に設定したことによるのであろう。
現状では、65歳→70歳の繰り下げを選択する人は僅かであり、高い水準には政策誘導の意味もあるであろうが、あまり適当に設定すると、後顧の憂いとなることは、念頭に置いておく必要があるだろう。


番号:77名前:管理人日時:2018年01月21日11時59分50秒権限:管理
【論評】労働生産性の向上
2018年1月21日付日経朝刊8面「安倍首相、生産性革命の本丸はここ」は、安倍政権の目指す生産性向上について論じている。
ところで、「生産性=産出(Output)/投入(Input)」であるが、その定義について、下記のサイトが解説している。
 『労働生産性とは?混同しがちな定義と計算式をわかりやすく解説』
  https://bowgl.com/2017/06/23/labor-productivity/ 
生産性を向上させるためには、産出にあたる生産物などを増加させるだけでなく、投入にあたる労働量を減らすのも有効である。その意味で、長時間労働の是正を目指す昨今の動きにも平仄が合っている。また、少子高齢化の急速な進行で労働者が減っていくことへの対応としても必要なことだろう。だが、この動きについては、反面での影響にも考慮する必要があるのではないか。
生産性の向上にAIの寄与が期待されているが、それは、従来型の労働に大きな変革をもたらす可能性がある。その動きは、大手銀行の大幅な人員削減の構想にも出てきている。
そうなると、少なくとも短期的には、AIによって代替される職種においては、仕事を失う人が大量に出てくる可能性がある。長期的には、衰退する産業から勃興する産業への転換を図るべきではあるが、経過的な問題状況は避けがたいのではないか。
そもそも、成長している産業には、人間の生存に不可欠な基本的な「衣・食・住」にかかるものは少ないように思う。むしろ、嗜好や娯楽など、ありていに言えば、「ひまつぶしの仕事」が増加しているのではないか。
このような状況にあっては、仕事の価値観も変わっていくであろう。本当に人の役に立つ仕事こそが、やり甲斐のあるものとの認識が高まることが期待されよう。
しかし、一方で、仕事は食うための手段でもある。価値観と必要性との落差の問題は、今後、ますます深刻なものとなるであろう。そのための一つの解決策がBI(ベーシック・インカム)ではないかと考えられるが、さて、日本人は、さらには人類は、その地平にまでたどり着けるであろうか。


番号:76名前:管理人日時:2018年01月21日10時37分19秒権限:管理
【論評】年金1000万円超で増税
2020年1月から公的年金等控除が圧縮される。2018年1月20日付日経朝刊21面「年金1000万円超で増税 20年から控除額に上限」は、これについて解説している。年金年額が1000万円超というのは、相当に恵まれた人だろう。全国で3000人程度しかいないそうだが、少しくらい税負担を増やしてもらうのも、当然に思える。
しかし、もっと問題なのは、年金について公的年金等分控除を受けながら、その上で働いて給与所得を得ている人は、給与所得控除も受けられるということである。これは、安定的な所得である年金と給与が、別の所得区分となっており、それぞれに控除が受けられることによる。
かつては、年金の受給は引退後であり、給与所得があるという人は例外的と考えられていた。しかし、今は、そんな時代ではない。基本的には、年金と給与を、同じ所得区分にして、控除は給与所得に統一すべきではないか。
これに対しては、高齢者の就労意欲を阻害する、との声がすぐ出てくる。しかし、若い人が受けられない公的年金控除を給与所得控除と別建てにするのは、高齢者に対する過度な優遇で、不公平であろう。
一方で、在職老齢年金制度として、年金受給者が就労すると年金額が減額される仕組みがある。高齢者の就労意欲阻害については、この制度の方が、よほど問題であろう。
したがって、全体的な体系としては、在職老齢年金制度を廃止する一方で、公的年金等控除を給与所得控除と統合すべきであろう。これを妨げるのは、年金資産と税収への影響の違いを懸念する厚生労働省と財務省のなわばり意識であろう。しかし、進む高齢化への対策として、これも「税と社会保障の一体改革」の一環にあたる。


番号:75名前:管理人日時:2018年01月20日08時27分51秒権限:管理
【論評】悪魔は優しい顔でやって来る。
2018年1月20日付日経朝刊17面のコラム「大機小機」は、「復活する米国経済」として、トランプ大統領の1年間で株価が大幅に上昇したことを受けて、「米国経済が復活しつつある現実を寡少評価すべきではないだろう」としている。
これに絡んで、2018年1月18日付朝日夕刊2面「トランプ氏が『フェイクニュース賞』発表」は、トランプ大統領が「米紙ニューヨークタイムズに掲載された経済学者ポール・クルーグマン氏のコラムに贈ると発表した」と伝えている。授賞理由は、「クルーグマン氏は株式市場は、トランプ政権下で『決して』回復しないと言った。ダウ工業株平均は最高値を記録している」ということだそうである。
日本では、「アベノミクス」によって景気が良くなったと考え、経済界は政権に物申すことを控え、また、若者は就職率の好転から安倍政権を支持している模様である。
もちろん、民の懐を潤す経済政策の重要性は、論を待たない。しかしながら、政治、経済、社会は、それぞれ切り離して考えられるものではない。
他国のトランプ政権については置くとして、安倍政権には不安材料がある。一つは、他ならぬ経済政策が、未来を犠牲にして、目先を取り繕うものではないのか、という疑問である。高齢化の急速な進行を考えると、財政健全化を二の次にしたような公共事業復活などのツクがどうなるのか、心配は尽きない。特に、東京オリンピックで浮かれて、需要を先食いした後の落ち込みが危惧される。
もう一つは、安保法制などに象徴される権力強化の動きである。日本は、権力の独走によって、先の大戦で亡国の淵にまで追い込まれた。「過ちは繰り返しませんから」というのは、そのことに対する真摯な反省に立った言葉ではなかったのか。
安倍政権の状況を見て、戦前の権力強化への不安を思い起こす人もいるであろう。私も、その一人である。権力は、腐敗し、暴走する。森友・加計問題を見れば、その兆しは、誰の目にも明らかであろう。
特に、若者に問いたい。就活で苦労したくないのは分かる。しかし、そのために権力の暴走に目をつぶった場合、戦場の前線に立たされるのは、貴方たちであることを、どのように考えているのかと。 


番号:74名前:管理人日時:2015年10月07日15時48分10秒権限:管理
【雇用関係記事】2015年9月26日 朝日朝刊16面「(声)派遣会社の教育に労働法も」
【雇用関係記事】2015年10月1日 朝日朝刊9面「外国人実習生巡る違反最多 厚労省発表」
【雇用関係記事】2015年10月1日 朝日朝刊33面「解雇理由を『罪状」と掲示 アリさんマークの引越社」
【雇用関係記事】2015年10月1日 朝日朝刊34面「『能力不足』分限免職 大阪市、職員条例を適用」
【雇用関係記事】2015年10月2日 朝日朝刊29面「(職場のホ・ン・ネ)ただ残業おかしい」
【雇用関係記事】2015年10月2日 朝日朝刊33面「『退職強要』アマゾン社員救済申し立て」
【雇用関係記事】2015年10月3日 朝日朝刊35面「育児で時短勤務、昇給抑制『違法』 東京地裁判決」
【雇用関係記事】2015年10月5日 日経夕刊7面「学生に労働法出前講座 ブラック就職、知識で防ぐ」
雇用関係の記事であるが、見出しを見ていただいただけで、気がめいる労働市場の現場の状況が分かるであろう。
問題企業の側は、基本的に、労働法の内容を理解していないようである。特異な例ではなく、パートには有給や産休の権利がないとうそぶく経営者も少なくないようである。
もちろん、当事者間で争いがある場合にあるから、記事の内容は鵜呑みにはできない。たとえば、大阪市の「能力不足」での分限免職の記事については、以前に労働組合が勝手きままに税金を浪費していた例からして、「さもありなん」と思う人も多いであろう。大阪市長の橋本人気の根底にも、それがあった。
しかし、「免職」は、労働者の心情からすると、死刑に等しい。「人事評価で最下位区分(全体の5%)が2年続いた職員らを対象」にするこのような分限処分では、評価の妥当性の検証が必須であるし、そのことを客観的にチェックできる仕組みも必要なのではないか。
業績に見合う処遇は、今後の日本社会を考えると必須であろう。しかし、時短勤務を理とする昇給抑制のように、評価する上司側に問題があるケースも少なくないのではないかと思われる。時間と費用のかかる裁判に向かわざるを得なくなる前の、仲裁的な仕組みの充実が求められているように思われる。







番号:73名前:管理人日時:2015年10月07日13時56分27秒権限:管理
【年金関係記事】2015年9月26日 朝日朝刊12面「(東洋経済の眼)『長生きリスク』対策 高齢者の相互扶助も視野に」
「週刊東洋経済」の視点を朝日新聞が紹介したもので、「総務省の家計調査(2014年)によると、高齢夫婦無職世帯は平均で月6万1560円の不足分を貯蓄の取り崩しで補っています」とし、「さらに病気や介護への備え、家の修繕費用などの特別支出を加えると3000万円以上の貯蓄が必要とも言われています」というものである。
そして、「高齢者も二極化」しているとし、「高齢者世代内での相互扶助は一考に値しそうです。税額控除できる寄付金制度など、富裕層が生活困窮者を支える仕組みを、『長生きリスク』対策の選択肢に入れてもいいのではないでしょうか。」とするものである。
しかし、そうは問屋が卸さないのではないか。「税額控除できる寄付金制度」を作っても、その前に、孫世代への贈与など、身内のことを考えそうである。「相互扶助」の意識がある人なら、今の仕組みでも、NPO法人の活用など、いくらでも方法はあるだろう。
減税で誘導するよりも、高所得・高資産の人には、課税を強化して応分の貢献・負担をしてもらうのが、筋ではないか。


番号:72名前:管理人日時:2015年10月07日13時43分40秒権限:管理
【年金関係記事】2015年9月26日 朝日朝刊5面「年金機構に改善命令」
厚生労働省は25日、日本年金機構に初めてとなる業務改善命令を出した、という記事である。
(1)組織の一体化などを進める改革(2)情報開示のあり方の抜本的見直し(3)情報セキュリティー対策の抜本的・迅速な強化――を求めたとされている命令書の実際の文書は、次のとおり、社会保障審議会会長に諮問されている。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/nii_1.pdf


番号:71名前:管理人日時:2015年09月30日10時59分14秒権限:管理
【雇用関係記事】2015年9月22日 日経朝刊3面「長時間残業、昇進『関係なし』 労働政策機構」
労働政策研究・研修機構が残業に関する調査をしたところ「残業時間の長い社員が早く昇進している」と答えた企業は4.8%で、長時間残業への評価が低いことが分かった、というものである。
一方で働く時間が長い労働者ほど「自分の仕事の効率性は高い」と答えた、というのであるが、どうすれば、こうした勘違いに到達できるのか、まるで理解できない。外国企業では、長時間をかけなければ業務をこなせない労働者は、「無能」とするのが常識だろう。
社員の残業を「評価していない」とする企業も48.7%で約半数を占めた、とのことであるが、本当だろうか。できる社員に業務を集中させて長時間労働にしたり、定時に退社しようとする社員に白い目を向ける職場の風土を、本気で改革しようとしているのだろうか。
ともあれ、長時間労働が昇進にも評価にも寄与しないという調査結果は、事態改善の一歩にはなるだろう。


番号:70名前:管理人日時:2015年09月30日10時47分04秒権限:管理
【年金関係記事】2015年9月22日 日経朝刊1面「新地平を開く(下)5% 家計金融資産の投信比率 投資の時代へ踏み出せ」
「米国市場で圧倒的な存在感を持つ金融商品が日本で徐々に広がっている。『ターゲット・デート・ファンド(TDF)』と呼ぶ年齢によって運用の中身が自動的に変わる投資信託だ。」との記事である。
NECが、確定拠出年金の運用対象にTDFを採用したそうであるが、「TDFの運用では若いうちは株式などのリスク資産に比重をかけ、退職年齢が近づくにつれて徐々に減らす」ものである。
確定拠出年金の加入者や資産残高が増えている中、加入者には投資の知識が求められる。TDFは、かねてからある投資手法の一つであるが、その特徴を理解して選択する必要があることは、他の運用商品の場合と変わらない。


番号:69名前:管理人日時:2015年09月30日10時37分56秒権限:管理
【年金関係記事】2015年9月19日 朝日朝刊7面「年金情報流出、職員30人処分 大臣ら給与返納 厚労省・機構」
【年金関係記事】2015年9月19日 日経朝刊5面「厚労相ら給与全額返納 年金情報流出巡り処分」
「日本年金機構がサイバー攻撃を受けて約101万人分の個人情報が流出した問題で、厚生労働省は18日、村木厚子事務次官ら職員14人の処分を発表した。」との記事である。「厚労省では、機構への最初の攻撃から17日間、上司に報告しなかった年金局係長ら4人が今回の処分で最も重い戒告となった」とのことであるが、この処分が相応に重いとは、とても思えない。
人事院の資料(http://www.jinji.go.jp/fukumu_choukai/choukaishuruitou.pdf)によれば、「戒告」は、「その責任を確認し、将来を戒める」とされており、免職、停職、減給の下の最低位の処分である。「訓告」に到っては、処分履歴すら残らないようである。
同様のことが民間企業で発生した場合、重過失であるから、戒告に見合う譴責で済むレベルではなく、停職や減給は、当然考えられるところであろう。この程度の処分なら、また事態が再発しても、不思議はないのではないいか。あれだけの報道を行っておきながら、この処分を淡々と伝えるマスコミも、どうかしている。


番号:68名前:管理人日時:2015年09月30日10時17分38秒権限:管理
【雇用関係記事】2015年9月18日 朝日朝刊30面「派遣法違反、実態生々しく 事前面接・契約外の庶務… 日産・アデコ判決」
「今年7月、大手派遣会社アデコから日産自動車に6年近く派遣された後に『派遣切り』された女性の裁判の判決があった。判決文からは、大手派遣会社が間に入っていても、派遣先企業に左右される派遣社員の不安定な労働の実態が浮かび上がってくる。」との記事である。
「判決は、複数の派遣法違反があったことは認めた」としている。記事では、まず、「『若いから素直で扱いやすいと思いますよ』。アデコの担当者は面接した日産社員にこう言ったという。『まるで奴隷商人だと思った』」との場面を紹介している。
「どの人を派遣するかを決めるのは派遣会社だというのが決まりで、派遣先が派遣社員を選ぶことは『特定行為』として禁止されている」が、「こうした“事前面接”は広く行われている」のいうのが常態であろう。派遣先企業にも問題はあるが、この違法行為には、派遣企業の責任が大きい。
次に、契約書による「パソコンを使ってデータを入力する仕事」に対する違反として、「1年くらいはコピーやホチキス止めなど。社員のためにお菓子や弁当を買いにも行った」という専門的業務への違反である。
判決は、アデコの担当者が女性の仕事内容を確認することを怠っていたとして、「派遣元事業主としての責任を果たさず、多くの派遣法違反を招いていた」と断じた、としているが、そもそも、派遣会社に、そのような仕事内容を確認する意識はないのではないか。
「今月11日に成立した改正労働者派遣法は、派遣社員が同じ派遣先で3年働いた場合、派遣会社が派遣先に直接雇用を依頼することなどを義務づけている」とのことであるが、仕事内容の制約が外れた今、コピーや弁当買いも、もはや違法ではない。「若いから素直で扱いやすいと思いますよ」との意識の派遣会社の人間が、形式はともかく、本気で「直接雇用を依頼」など、するわけがないだろう。派遣労働者を、いつでも契約打ち切り可能の下級労働者として位置づける、それが改正派遣法の本質である。


番号:67名前:管理人日時:2015年09月30日09時54分56秒権限:管理
【経済関係記事】2015年9月16日 朝日朝刊17面「(ピケティコラム@リベラシオン)難民の受け入れ 欧州は開かれた取り組みを」
大きな問題となっている難民について論じたものであるが、さすがに、ピケティ氏の視点は、一味違うと思わせる。
「21世紀において、欧州大陸は移民の大陸になりうるし、なるべきだということだ。あらゆる事情が、その方向を指している。欧州を内部からむしばみ、現在、進行している高齢化が移民を必要としているし、また欧州の社会モデルは移民を受け入れることが可能だ。」というのが氏の主張であるが、それは過去の歴史と現在の問題認識に基づいている。
「欧州連合(EU)の人口は、1995年に約4億8500万人だったのに対し、2015年には約5億1千万人になった」(EU拡大分を除く)が、増加の「4分の3近くに相当する1500万人以上分の人口増加の要因が、人口移動に求められる」という。
「出生率の低さを考えると、ドイツには移民の受け入れ以外の選択の余地がほとんどないとも言えよう」とし、旧東欧諸国も、「21世紀末にかけてこれらの国々の人口は、現在の9500万人からほぼ5500万人に減るということだ」としている。
EUが連携・拡大に動いたのは、移民によって活力を維持する米国を意識してのことであろう。だとすると、EUへの移民は、むしろ歓迎すべき事態ということになる。このような視点は、日本のマスコミ報道には、見られない。
ひるがえって、日本はどうするのか。私自身は、この狭い島国に1億人以上の人々が住んでいる状態が普通ではないと考えている。米国には広大な国土があり、EUも地理的拡大を前提としてきた。日本がアジア経済圏での共存・協栄を考えるなら、むしろ、日本人が外に出て行って、発展途上の国々を支援すべきではないのだろうか。


番号:66名前:管理人日時:2015年09月30日09時37分27秒権限:管理
【雇用関係記事】2015年9月15日 日経朝刊30面「(経済教室)技術革新は職を奪うか」
鶴光太郎・慶大教授による論説で、関係する論文を紹介しながら、「新たな機械化」が将来の雇用にどのような影響を与えるか、を論じたものである。
ポイントとして整理されているのは、①長期的に労働者は不要になるとの警告も、②人間と機械は補完的な役割も果たし得る、③機械は答え出せても問い発する能力なし、の3点であるが、②と③は、少々楽観的に過ぎるように思われる。
③について言うと、人間でも、自発的に問いを発する能力は、必ずしも高くない。過去のデータを整理し、一つの仮説を提示することを「問い」と呼ぶなら、機械化は、その水準にまで達してきていると感じられる。
「人間の持つ芸術性(演劇、音楽)、身体能力(スポーツ)、思いやり(セラ ピー)、もてなし(レストラン)などへお金を払いたいという需要」というのは、もっともらしいが、一般的な人間が、その需要に応じられる水準かどうかは疑わしい。
「好奇心 の赴くままに学ぶ」「どうして世界はこうなっているかを問う」など、自由な環境での自発的学習については、日本の教育の現況は、絶望的とも思える。
本来、機械化によって省力化できた分は、肉体的・精神的余裕につながらなければならないはずである。しかし、一部の人間が富を独占することによって、格差を生じさせ、低賃金の労働者は、長時間の肉体の切り売りで生活していくしかない状況に追い込まれている。機械化の進展によって国民が豊かになるのかどうかは、税制など、優れて政治的問題に思われる。


番号:65名前:管理人日時:2015年09月30日09時15分21秒権限:管理
【雇用関係記事】2015年9月15日 朝日夕刊2面「長時間労働なくなれば、深夜コンビニも減らせる?」
厚生労働省による2015年版の「労働経済の分析」(労働経済白書)の記述で、「専門職や事務を中心に長時間労働が増えたことが、夜間のサービスの需要を生む面がある、と分析。こうした専門職らが長時間労働をやめれば、販売やサービスに携わる人を含めて夜間に働く人が減るとして、『社会全体の効率化に資する可能性がある』とした」ものである。深夜型社会に長時間労働も影響を与えているとする興味深い分析である。


番号:64名前:管理人日時:2015年09月14日15時59分06秒権限:利用
【税制関連記事】2015年9月11日日経朝刊2面「(社説)社会保障・税一体改革の視点忘れるな」
【税制関連記事】2015年9月11日朝日朝刊14面「(社説)消費税の還付 案の利点生かす論議を」
どちらの社説も、「財務省は消費税率を10%に引き上げる際に導入する負担軽減案をまとめた」ことに対する論説である。
日経は、「年間の消費税還付額には1人当たりの上限額が設けられる見通しで、高所得者の負担軽減に一定の歯止めをかけるなら妥当だ。税収が大きく目減りする事態も避けられる。」点を評価している。朝日もまた、「一人あたりの還付額に上限を設けながら、還付の対象者から所得の多い人をはずす選択肢にも触れており、軽減税率の問題点を意識した内容と言える」と評価している。管理人も、巧妙な案が出てきたものだと感心している。もちろん、「零細な小売店も対応できるか」(日経)、「プライバシーの観点」(朝日)など、課題は多い。しかし、「低所得者ほど負担が重くなる逆進性」に対する方策としては、評価できるものと言えるだろう。
日経が言うように、「高齢者を一律に弱者とみなすのでなく、所得や資産に応じて負担してもらうべきだ。真に支援が必要な低所得者への適正な安全網を築くのも不可欠だ。」ということなら、適切な代案が出てこない限り、この案を軸に検討を進めるべきであろう。


番号:63名前:管理人日時:2015年09月14日14時12分12秒権限:利用
【年金関係記事】2015年9月10日朝日朝刊16面「(声)年金機構は廃止して民間委託を」
声欄への投書で、日本年金機構の不祥事について、「一般企業がこの状態になれば指名停止になるか、業者選定で不利に扱われる」が、「独占企業」では、「競争原理が働かず、改革意欲は望めないだろう」として、「民間企業に委託してみてはどうか」とするものである。気持ちは大変よく分かるが、この問題を営利を第一とする民間企業に委託するのは、問題があると思わざるを得ない。機構の今回の問題は、あまりにもお粗末だが、それは、経営・管理体制の問題である。業務の本質を知りもしないものをトップに据えるような慣行が問題なのであり、それは東芝事件にも通じる。官民を問わず、指導・管理層の再点検・監視・刷新を行なえる仕組みにしなければ、問題が解決するようには思えない。


番号:62名前:管理人日時:2015年09月13日17時37分39秒権限:管理
【年金関係記事】2015年9月12日 朝日朝刊1面「新企業年金を導入へ 来年度、労使で運用リスク分担 厚労省」
【年金関係記事】2015年9月12日 日経朝刊4面「年金リスク、労使で分担 厚労省、第3の企業年金案を提示」
年金時事通信15-017号で論評します。早期登載のリクエストは、この掲示板でお知らせ下さい。


番号:61名前:管理人日時:2015年09月13日17時32分58秒権限:管理
【雇用関係記事】2015年9月11日 朝日夕刊1面「改正派遣法が成立 受け入れ期間、事実上撤廃」
【雇用関係記事】2015年9月11日 日経夕刊1面「改正派遣法成立、30日施行 受け入れ期間、実質撤廃」
【雇用関係記事】2015年9月12日 朝日朝刊3面「『人を代えれば、ずっと派遣で』可能に 改正派遣法、30日施行」
【雇用関係記事】2015年9月12日 朝日朝刊16面「(社説)改正派遣法 権利守る改正が必要だ」
【雇用関係記事】2015年9月12日 日経朝刊3面「派遣、活用の道広く 改正法成立、30日施行」
【雇用関係記事】2015年9月13日 日経朝刊2面「(社説) 派遣で働く人の立場にたち制度の再考を」
とうとう、派遣法改悪が成立した。この法律の最大の問題点は、派遣の最大の特徴とすべき「専門能力を、臨時的に利用」という原則を破壊したことである。12日朝日朝刊3面の記事では、中村天江・リクルートワークス研究所主任研究員が、「あいまいだった業務区分がなくなり、ルールが分かりやすくなった点は評価できる」としているが、これは専門能力を軽視し、例えば通訳での派遣者にも電話当番をさせるという、企業が都合のよい使い捨て労働者としてきた違法な状況を追認するものに過ぎない。一方、同記事で、高橋賢司・立正大学准教授は、「派遣労働を厳しく規制する独や仏などの国際的な潮流に逆行する。独は2011年に『派遣は一時的労働に限る』と法律に明記し、無期限派遣は不可能になった。」としている。
企業寄りの日経は、13日朝刊2面の社説で、「派遣で働く人の立場にたつと、続けたい仕事でも3年たつと変わらなくてはならない場合が出てくる」と、永続的な業務固定派遣を主張している。永続的なら、正規の労働者として雇用すべきではないのか。
一方、12日朝日朝刊16面の社説では、「派遣社員の権利をどう守り、強化するか、という視点からの改正ではなかったために、積み残された課題が多い。さらなる法改正が必要だ。」とし、「派遣社員の処遇を改善するには、『均等待遇原則』を明示して、法律で裏打ちする必要がある」としている。
これに対し、12日日経朝刊3面の記事で、八代尚宏・昭和女子大特命教授は、「ここからは正社員でも派遣社員でも、同じ仕事で同じ賃金を受け取れる『同一労働同一賃金』を実現することが大切だ」としている。その言葉にだけなら賛同できるが、「今回の法改正は望ましい改革に向けた第一歩だ。企業にとっては派遣社員を活用しやすくなる。また、業務の区分がなくなって派遣社員も働きやすくなる。」という見方は、「同一労働同一賃金」の本来の趣旨を理解していないからであろう。本来の趣旨は、技能、特に専門的技能を発揮して業績に貢献した従業員には、正当で公正な評価を行う、というものであろう。そこには、日本の企業が温存してきた「年功序列賃金や解雇規制など正社員を過剰に守る仕組み」が入り込む余地がない。今回の改悪法が専門的技能を軽視し、「同一労働同一賃金」の流れに逆らうものであることは、26業務の中で専門的技能を発揮してきた派遣労働者の不安の声からも見てとれる。
八代氏は、「派遣法を巡る論争は既得権を守る正社員と、弱い非正規の『労労対立』だ」としているが、これこそ権力にこびる者の発想で、徳川幕府の「分断統治」を思い起こさせる。「臨時・高度」の業務を派遣労働者に高報酬で任せれば、正社員の地位に魅力を感じなくなる労働者も増えるかもしれない。それを企業が怠るのは、派遣労働者を、低賃金・使い捨ての戦力と考えているからであろう。3年間で合法的に派遣労働者を切り捨てることのできる改悪法は、本質的に、「派遣切り」正当化法である。


番号:60名前:管理人日時:2015年09月13日16時47分53秒権限:管理
【年金関係記事】2015年9月11日 日経夕刊12面「100歳以上、初の6万人 45年連続増、女性が87%」
【年金関係記事】2015年9月11日 朝日夕刊10面「100歳以上、6万人超す 女性87%」
【年金関係記事】2015年9月9日 日経夕刊3面「高齢者が住みよい国、日本は世界8位」
「100歳以上の高齢者が全国に6万1568人いることが11日、厚生労働省の調査で分かった」ことを受けた記事である。戦後間もなくの状況からすると、想像もつかない事態であろう。戦争なき国家としての経済的繁栄の賜物と言えるのではないか。
また、「高齢者の生活環境を調査する国際団体のヘルプエイジ・インターナショナルは9日、高齢者が暮らしやすい国の 2015年の順位を発表し、日本は世界で8位だった。寿命の長さや高齢者の健康状態などへの評価が高かった。」との報道もあった。「総合1位はスイス、2位はノルウェーと欧州諸国が上位」とのことである。
「高齢者の健康に加え、年金や雇用、公共交通の使いやすさなどのデータをもとに96カ国・地域を対象に調査」したもので、日本は、「健康のほか高齢者の雇用指標などでも評価が高かった」とのことである。経済的安定の基盤である年金の貢献も大きいであろう。日本国内では、高齢者福祉にばかり税金が向けられているとの批判があり、現役世代にもっと予算を振り向けるべきだとの声が大きくなっているように感じられるが、一方で、高齢者も貧困率は高い。高齢化が進む中、「高齢者が住みよい国」という評価を守っていくことは重要なことではないか。国民が共同して知恵を絞っていく必要があるだろう。


番号:59名前:管理人日時:2015年09月09日18時16分07秒権限:利用
【雇用関係記事】2015年9月9日 日経朝刊1面「トヨタ再雇用、同待遇で 労使合意 工場、シニアの力活用」
【雇用関係記事】2015年9月9日 日経朝刊12面「トヨタ『頑張り』も月給反映 新人事制度 最大1.5万円上乗せ」
「トヨタ自動車は工場で働く社員約4万人を対象に、新たな人事制度を2016年1月に導入することで労働組合と合意した。再雇用制度を刷新し、定年退職後も65歳まで現役時代と同水準の処遇を維持することが柱となる。」との注目すべき記事である。
「一定の条件を満たせば現役時代と同じ処遇で働き続けられるコースを設ける」とし、「実質的な定年延長」(幹部)に踏み切り総人件費増は生産性向上などで吸収する。とのことである。新制度では「技能発揮給」を設けて、積極性や協調性、責任感、規律といったポイントを軸に社員の頑張り具合を反映させる。また、「いかに仕事に取り組んだかを評価し、技能発揮給の基準額(7万円)から最大1万5千円を積み増す」一方で、「働きぶりが期待を下回る場合は最大1万円減らす」とのことである。
この手の試みでの最大の課題は、年功序列制度を、いかにして是正するか、という点である。肥大化した中高年処遇を単に延長するのでは、組織の高齢化による劣化は避けられない。「工長」「組長」の名称復活も時代錯誤に見えるが、果たしてどうか。
もう一つ、注目に値するのは、「配偶者手当を廃止して子供手当に一本化」との点である。これが他の企業に浸透すれば、税制がらみとの誤解の配偶者控除103万円の壁がなくなり、いよいよ社会保険の130万円の壁が際立つことになろう。


番号:58名前:管理人日時:2015年09月09日18時02分21秒権限:利用
【雇用関係記事】2015年9月5日 日経朝刊2面「社説 長時間労働を見直し女性の力を生かそう」
【雇用関係記事】2015年9月8日 日経夕刊9面「女性活躍ネクストステージ(上)新法が追い風 チャレンジを」
【雇用関係記事】2015年9月9日 日経朝刊5面「ポピンズCEO 中村紀子氏 配偶者控除、経済に実害」
まず、「大企業に女性の育成・登用に向けた行動計画づくりを義務付ける女性活躍推進法が成立」したことについての日経社説で、「活躍を阻んできた長時間労働などの障壁をなくし、より働きやすい職場にするための一歩としたい」としている。
2番目の夕刊記事は、「国際団体カタリスト最高経営責任者(CEO)デボラ・ギリスさんに日本の課題と女性へのアドバ イスを聞いた」というもので、「一番は長時間労働。長く働いてこそ評価される職場環境では、出産・子育てを担わざるを得ない女性に不利だ。」としている。
これに対して、中村氏のコメントは、税制に対するものとは言え、「時代遅れの税制は今すぐに廃止すべきだ」と狭量である。聞き手の記者も、「主婦の年収が103万円を超えると夫の税金が増える配偶者控除の矛盾」と、税制への理解不足をさらけ出している。
女性の活躍を推進すべきであるという点には、まったく異論はないが、派遣法改悪の動きや社会保険の適用拡大忌避など、劣悪な労働条件の固定化の動きも目立ってきている。
女性の活用推進を真に願うのなら、平等で公正な労働市場の確立を目指さなければならない。現政権には、そんな期待はもてそうもないが。


番号:57名前:管理人日時:2015年09月09日17時41分47秒権限:利用
【雇用関係記事】2015年9月8日 朝日夕刊1面「採決の構え、混乱 派遣法改正案めぐり 参院厚労委」
【雇用関係記事】2015年9月8日 日経夕刊3面「労働者派遣法改正案 与党、きょう採決の構え 参院厚労委」
【雇用関係記事】2015年9月9日 朝日朝刊3面「改正派遣法、週内にも成立 参院厚労委で可決 急いだ採決、審議一時混乱」
【雇用関係記事】2015年9月9日 日経朝刊4面「派遣法案あすにも成立 参院委で可決 施行、9月30日に」
【雇用関係記事】2015年9月9日 日経夕刊1面「派遣法改正案が参院可決 あすにも衆院で成立」
「派遣法は研究開発や通訳など専門26業務には期間制限がないが、その他の業務は最長3年の制限を設けていた。改正案はこうした業務の区分を なくす。企業は3年ごとに人を代えれば、同じ仕事を派遣社員に任せ続けることができるようになる。」という法案が、いよいよ成立寸前である。
「民主が最終的に採決を認めたのは、約40項目にのぼる異例の数の付帯決議を付けて『実を取る』(民主党の津田弥太郎氏)ためだ」そうである。「付帯決議でがんじがらめにした。派遣業界も、色々とお土産がついてきて驚くだろう」(野党議員)とのことだが、さて実際に効果があるのか、成立後も監視が必要になるが。



番号:56名前:管理人日時:2015年09月09日17時25分32秒権限:利用
【投資関係記事】2015年9月4日 日経夕刊5面「(十字路)議決権行使助言会社のあり方 」
野村総合研究所主席研究員の大崎貞和氏による論説で、黒田電気の臨時株主総会に触れ、「村上世彰氏らを社外取締役候補に推す株主提案が60%の反対で否決された」が、村上側の持ち株比率は16%であるのに、「その提案が40%近い支持を集めた要因の一つは、議決権行使助言会社大手の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)による賛成推奨にあったと思われる」とするものである。
「ISSの原則では、特定の大株主の代弁者であるような取締役候補者は独立性を欠くとされる」のに、「ISSは、今回は取締役会での企業価値向上への議論が深まるといった効果が期待できるなどとして、自社の原則をそのまま適用はせず、賛成を推奨した」ことについて、「助言会社が恣意的に賛否を判断するのでは問題だ。適切な判断を下せる体制整備や利益相反の防止、判断プロセスの透明性確保が求められる。」と批判している。
まさに、論説の通りである。年金基金などの長期保有株主にとっては、議決権行使も重要な権利であるが、安易に助言会社に頼ることは問題であることを指摘している。


番号:55名前:管理人日時:2015年09月04日17時55分14秒権限:利用
【会計関係記事】2015年9月3日 日経朝刊19面「(わかる国際会計基準3)M&Aの『のれん』費用計上せず 価値下がれば減損処理」
【会計関係記事】2015年9月4日 日経朝刊17面「(わかる国際会計基準4)研究開発費は『資産』 製品発売後に費用計上」
国際会計基準と日本会計基準との大きな違いである「のれん」と「研究開発費」について述べたものである。
国際会計基準では、のれんを償却しないため、「研究開発費の一部を『会社の資産』とすることを認めている」ため、「のれんの償却負担が最初から生じないため、有望な投資機会を逃さずに済む」という面があるようだし、「損益計算書への影響を抑えながら製品開発を加速」という面があるようである。
ルールには背景がある。日本は独自だ、と言い続けるだけでは、議論を深め高みを目指すことはできないであろう。


番号:54名前:管理人日時:2015年09月04日17時41分09秒権限:利用
【年金関係記事】2015年9月4日 朝日朝刊4面「年金抑制強化、先送り 秋以降の提案めざす 厚労省」
年金の給付水準を毎年少しずつ下げていく「マクロ経済スライド」の強化策として、「ルールを見直し、デフレで見送った減額分を持ち越して物価・賃金の上昇幅が大きい時にまとめて減らせるようにする」法案である。合理的な修正と思われるので、先送りは残念だが、「6月に年金情報流出問題が発覚」したあおりである。


番号:53名前:管理人日時:2015年09月04日17時35分40秒権限:利用
【年金関係記事】2015年9月3日 日経夕刊3面「確定拠出年金法改正案、衆院を通過」
第33号でも取り上げた「個人型確定拠出年金を使いやすくする確定拠出年金法改正案が3日午後の衆院本会議で、自民、民主、公明各党などの賛成多数で可決、衆院を通過した。」との記事である。「政府・与党は今国会中に成立させたい考えだが、同法案を審議する参院厚生労働委員会では野党が強く反発している労働者派遣法改正案の審議が続いており、27日までの会期中に成立するか微妙だ。」とのことである。法案は、個人的には疑問があるが、ポータビリティを謳い文句に導入された確定拠出年金の欠陥が露呈したためと言えよう。


番号:52名前:管理人日時:2015年09月04日17時24分44秒権限:利用
【会計関係記事】2015年9月3日 朝日朝刊14面「(経済気象台)監査人はスーパーマンか」
【会計関係記事】2015年9月4日 日経朝刊5面「会計士協会、不正リスク調査 全上場企業の会計士対象」
【会計関係記事】2015年9月3日 日経朝刊29面「経済教室 企業統治何が必要か(上) 経営層の相互けん制カギ」
「経済気象台」は、「財務諸表を作成する責任は評価対象の経営者自身にある」とする一方、「監査人には捜査や調査の強制権限はない。あくまでも限られた条件の下で監査をしているのであり、万能なスーパーマンではない。」とし、「東芝の不正会計に関して、会計監査をスケープゴートにすることだけは避けなければならない」とするものである。
しかし、「監査人は専門的能力と厳格な独立性が求められており、厳しい自己規律の下に置かれている」という状況下で、「公共の利益を守る市場の番人、監査人」というのなら、まして少なからぬ報酬を受け取っている身であれば、「監査人の責任も厳しく問う風潮」は、当然のことではないのか。さすがに日本公認会計士協会は、「約3500社にのぼる全上場企業の監査を担う会計士を対象に、過去に不正・不適切会計などを疑われるような事態がなかったかを調査する」とし、「東芝が7日に有価証券報告書を提出するのを待ち、監査を担当する新日本監査法人の会計士への聞き取りを本格化する」とのことである。
東芝事件では、多くの内部告発が握りつぶされた噂も聞く。監査人が信頼される存在なら、そこにも告発が届いただろう。
もとより、経営者の責任が一番重いのは当然である。「経済教室」では、大杉謙一中央大学教授が、「現場に比べ経営層の法令順守意識不十分」としているが、自明のことである。企業統治の最大の肝は、経営者の統制であり、投資家という他人の資産を預かっている以上、刑事罰も含め、厳罰に処さずしては、浄化は進まないのではないか。


番号:51名前:管理人日時:2015年09月04日17時03分10秒権限:利用
【雇用関係記事】2015年9月2日 日経夕刊1面「外国人在留資格を拡大 専門人材受け入れ 法務省検討 入国審査も迅速に」
【雇用関係記事】2015年9月3日 日経朝刊2面「社説 人手不足の根にあるものを見極めよう」
【雇用関係記事】2015年9月9日 日経朝刊9面「(ニュース解剖)人手不足 もがく現場」
人手不足に関連する記事である。社説では、「いまの人手不足の原因は、一つには経済のサービス化に雇用構造が追いついていないことだ」としている。はっきり言って、日本の労働者のレベルは低くない。気配りもでき、仕事への柔軟な対応ができる。そうでなければ、コンビニで、あんなにも多様な業務を効率的にこなせるわけがない。「すき家」で問題になった一人夜間勤務など、他の国では、およそ成立しそうもないのではないか。
にもかかわらず、そのような労働者を低賃金で使い捨て同然にしてきたのが、日本の企業である。口を開けば、中国などの新興国の低賃金には対抗できない、と言ってきた。そんな業界が人手不足に陥るのは、自業自得であろう。
「日本の人口減の速度を計算すると、今後いや応なく外国人に頼らざるを得ない局面に入る」(法政大教授・小峰隆夫氏)ということだが、国内に貧困格差が生じている中、安易に外国人に頼っていいのか。さすがに社説すら、「外国人技能実習制度は実習生を安い労働力ととらえる雇用主が少なくなく、違法行為も後を絶たないため抜本的に見直す必要がある」としている状況である。
ヒントになりそうなのは、「一風変わったアルバイトの採用に乗り出した。自治体と組み、地域のシニアに雇用の場所を提供する。全社を挙げてシニアの本格採用に動く」という「セブンイレブン・ジャパン」である。日本には、まだ有効に活用されていない労働力がある。自国の問題の解決には、まず自国の資源を取り組まなければならないのは、当然のことだろう。


番号:50名前:管理人日時:2015年09月04日16時38分56秒権限:利用
【雇用関係記事】2015年9月2日 朝日経朝刊7面「派遣法改正、急ぐ政府 未成立で施行予定日 制裁、来月から新制度」
「企業が派遣社員を事実上ずっと受け入れられるようになる労働者派遣法改正案が、成立しないまま施行予定日の1日を迎えた。政府・与党は施行日を30日に修正する意向だが、その場合でも成立から施行までの周知期間はごくわずか。施行を急ぐのは、違法派遣に対する新しい制裁制度が10月1日に始まるからだ。」との記事である。
この問題については、第14番の投稿で述べたが、「違法派遣があった場合に、派遣先が派遣社員に直接雇用を申し込んだとみなして制裁がかかるしくみ『みなし制度』が、10月1日に始まるからだ。」とするものである。
いい加減だと思えるのは、「違法派遣」を是認・救済するために、施行日を9月1日に設定し、慌てて9月30日にしようとしている政府の姿勢である。そもそも法案自体が派遣労働者の地位向上などにつながるものではないことの明白な証左であろう。


番号:49名前:管理人日時:2015年09月02日14時38分38秒権限:利用
【会計関係記事】2015年9月2日 日経朝刊15面「(わかる国際会計基準)(2)消えた営業利益 開示項目、重要性で判断」
【会計関係記事】2015年9月2日 日経朝刊15面「投資情報 国際会計基準の適用済み68社 東証調べ」
第46番の記事の続編と関係情報である「国際会計基準(IFRS)では企業が『投資家にとって重要かどうか』を判断して開示する項目を決めることができる」ことで、営業利益を出さない企業が出てきているとのことである。また、「日本基準ではおなじみだが、IFRSでは存在しない項目として『特別損益』がある」という点もある。
投資家にとって何が有用な情報であるのか、企業による追加的な開示の中身も含めて、今後も問われていくことになるであろう。そういえば、「ジュードー」で日本の関係者が批判していた青い柔道着も、すっかり定着している。


番号:48名前:管理人日時:2015年09月02日14時28分53秒権限:利用
【雇用関係記事】2015年9月2日 日経朝刊11面「『すき家』契約社員、800人をバイトから 17年メド1000人採用」
「ゼンショーホールディングスは2017年3月までをメドに契約社員を1千人採用する。牛丼店『すき家』が対象でアルバイトらを登用する。店舗運営の中心を担う人材を契約社員として囲い込み、人手不足の解消につなげる。」との記事である。ブラックバイトの象徴的存在だった「すき家」だが、「最低ラインに設定する月100時間勤務の場合、年収はおよそ160万円でアルバイトと比べ5割ほど多い」との水準でも、低賃金だろう。なおも、「人手不足に悩む外食各社は雇用条件の見直しに動いており、ゼンショーが人材獲得競争に勝ち抜けるかは不透明」とのことであるが。


番号:47名前:管理人日時:2015年09月02日14時20分52秒権限:利用
【雇用関係記事】2015年9月2日 日経朝刊1面「脱時間給法案を断念 政府・与党、民法改正・カジノも 安保の審議優先」
「政府・与党は労働時間ではなく成果に賃金を払う『脱時間給』制度(ホワイトカラー・エクゼンプション)の新設を盛り込んだ労働基準法改正案の今国会成立を断念する」との記事である。
「政府・与党は『柔軟な働き方を実現するための規制緩和』と説明するが、民主党などは『残業代ゼロ法案』と批判している」ものであった。
一方で、「政府・与党は企業の派遣労働者受け入れ期間を事実上撤廃する労働者派遣法改正案を10日にも成立させる考え」とのことである。どちらの法案も筋が悪いが、成否が分かれた格好である。結果的には、正社員が影響を受ける法案が消え、非正規の派遣社員が影響を受ける法案が成立の方向となる。